法人登記を考えている個人事業主や、スタートアップの起業家の場合、とりあえず自宅を登記する人がいます。
しかし、自宅を登記するのはデメリットが多く、あまりおすすめできません。
この記事では法人登記の詳細をはじめ、自宅を登記するメリット・デメリットについて解説していきます。
法人登記とは?
法人登記とは、会社を設立したときに法務局に会社の情報を登録し、一般的に開示することです。
正確には、株式会社などの営利目的の場合は「商業登記」で、NPO法人などの非営利目的の場合は「法人登記」になります。
しかし世間的には、これらをまとめて「法人登記」と呼ぶのが一般的です。
商業登記は、会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)等について、法人登記は、会社以外の様々な法人(一般社団法人・一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人等)について、その商号・名称や所在地、役員の氏名等を公示するための制度です。
対象となる会社、登録する情報は以下の通りです。
- 対象となる会社
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- 持株会社(株式会社)
- 持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)
- 一般社団法人、一般財団法人
- その他の会社・法人(特例有限会社、NPO法人、社会福祉法人等)
- 登記する主な情報
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- 会社の名称(社名、商号)
- 会社の所在地
- 代表者の氏名
- 事業目的
設立の登記を行うと「登記事項証明書」が法務局より発行され、会社として認められます。
いわゆる「法人格(法律上の人格)」と言われるもので、権利・義務の主体となることのできる資格や権利能力です。
法人格が認められることで社会的信用度の向上を図り、取引をスムーズに進めることにも繋がります。
法人登記に関する各種手続きについては、法務局のホームページから確認できます。
参考:商業・法人登記申請手続:法務局(moj.go.jp)
法人登記は自宅の住所でも可能
本店所在地については、指定する住所に決まりはないです。そのため法律上では、自宅を会社の住所として登記しても問題はありません。
持ち家はもちろん、オーナーや管理組合が了承すれば、賃貸物件や分譲マンションでも登記はできます。
賃貸物件や分譲マンションで登記したい場合は、建物のオーナーや管理組合に相談する前に、契約時に交わした「管理規約」を確認してみると良いでしょう。
自宅の住所を法人登記するメリット
自宅住所で法人登記をするメリットは、主に以下の2つです。
自宅兼オフィスであれば、新たにオフィスを借りるための敷金礼金がかかりません。また、自宅の家賃や光熱費の一部を、法人の経費として計上することができます。
たとえば、自宅面積の3分の1を事務所として使っていれば、その分の家賃を経費として計上することが可能です。
また、自宅で仕事をするのであれば通勤時間を節約でき、仕事の時間に余裕ができます。今まで電車通勤をしていた人は、満員電車のストレスから解放されます。
自宅の住所を法人登記するデメリット
自宅の住所を法人登記するデメリットは、以下の5つです。
- 管理規約の問題
- 住宅ローンの審査や減税制度上で問題
- 許認可の問題
- 融資審査の問題
- 個人情報の流出で自宅がバレる
こちらではデメリットについて、一つ一つ解説していきます。
管理規約の問題
「法人登記は自宅の住所でも可能」の項目でも解説しましたが、賃貸物件や分譲マンションの場合は、管理規約に引っかかる可能性があります。
マンション管理規約に「主として居住用として利用する」「事務所用途が不可である」という文言が入っていると、自宅を登記するのは難しいです。
仮に黙って登記したことがオーナーや管理組合に発覚すると、トラブルになって退去を迫られるかもしれません。
住宅ローンの審査や減税制度上で問題
自宅を購入する際は、金融機関から融資を受けて住宅ローンを組むのが一般的です。住宅ローンで借りた金銭に関しては、事務所の資金融資に充てることはできません。
また、住宅ローン減税については、あくまで「居住用」の土地・建物だけを対象とした制度です。
そのため、事務所として使用している分に関しては、住宅ローン減税の対象外になります。
一般的に住宅ローンの契約には、「居住用でなくなった場合には、期限の利益を喪失する」と記載されています。
そのため、持ち家を事務所として利用すると契約違反になり、住宅ローン減税が受けられない可能性が高いです。
許認可の問題
税理士や行政書士などの一部の士業、または建設業の場合は、「居住部分と明確に区別した事務スペースの確保」が、営業許可の条件として求められます。
そのため、賃貸物件や分譲マンションの場合は、この条件を満たすのは極めて困難です。
融資審査の問題
会社を運営するためには、金融機関から事業資金の融資を受けるのが一般的です。自宅住所を登記した場合、融資の審査を受けるときに、信用面で不利になることがあります。
「法人と経営の会計がしっかり区別されているか?」というのが、金融機関が法人を評価するポイントになるからです。
そのため、登記住所が自宅の場合は「事業資金を個人で使ってしまうリスクがある。」と、見なされるかもしれません。
個人情報の流出で自宅がバレる
登記した情報に関しては、公開情報として指定されて、誰でも閲覧することが可能です。
国税庁の法人番号公表サイトでは、会社名および登記住所などが、誰でも閲覧できるようになっています。
そのため自宅で登記した場合は、住所が一般公開でバレてプライバシーの問題に関わります。
会社への営業やセールスが、自宅に突然押しかけてくるかもしれません。
また、仕事のサービスでトラブルが発生すれば、激怒したクレーマーや危険な人物が直接自宅を訪れてくる可能性があります。
家族がいれば配偶者や子供に迷惑がかかったり、近所迷惑から隣人トラブルになったりするリスクが高いです。
デメリットを考えると、自宅の住所を法人登記するのはおすすめできない
ここまで、自宅で法人登記するメリット・デメリットについて解説しましたが、比較してみると自宅で法人登記するのはおすすめできません。
仮に自宅を法人登記するとしたら、以下の人が該当するでしょう。
- 一人で事業をしている人
- 自宅が持ち家で、住宅ローン減税を気にしない人
- 仕業や建設業ではない人
- 融資を受ける必要がない職業(ブロガーやYouTuberなど)
- 家族と同居していない人
- 近所迷惑の心配がない人
これらの条件をクリアしている人はかなり稀なので、多くの人は自宅以外の住所を登記するのがおすすめです。
レンタルオフィスは法人登記が可能
「自宅以外の場所で登記をしたいけど、事務所を借りる初期投資は抑えたい。」そんな人は、レンタルオフィスを利用して法人登記をするのがおすすめです。現在多くのレンタルオフィスでは、法人登記に対応しています。
また、レンタルオフィスであれば、敷金礼金が不要です。オフィス家具やインターネット設備も用意されているため、賃貸オフィスよりも初期費用を抑えられます。
レンタルオフィスと賃貸オフィスの違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています!
https://www.hello-office.net/columns/p267/
※一部のレンタルオフィスは法人登記をする際に有料だったり、法人登記に対応していない場合もあるので注意してください。
自宅を法人登記することに関してのまとめ
自宅を法人登記することに関してのまとめ
- 法人登記とは、会社の情報を法務局に登録して一般的に開示すること
- 自宅でも登記できるが、デメリットが大きいのでおすすめしない
- 初期費用を抑えたいなら、レンタルオフィスを利用して登記するのがおすすめ
基本的に、自宅を登記するのはおすすめできません。これから法人登記をして事業を始める人は、別に賃貸オフィスを借りるか、レンタルオフィスを利用するのがベターです。